コラム
2026年10月16日
経営コンサルの原点 450万円で買った整骨院【その壱】
経営コンサルの仕事に取り組む原点の一つは、私が28歳で初めて独立し、整骨院を買い取ったときの経験です。買い取り金額は、記憶では約450万円。しかし、開業までに必要なお金は、それだけではありませんでした。
スタートは、すでに営業している整骨院を引き継ぐという形でした。
当時は整骨院に勤務し、自分を頼って来てくださる患者さんも増えていました。「自分でやったら、もっと患者さんに来てもらえるんじゃないか」。そんな思いが強くなっていた一方で、独立するために何から手をつければいいのかは、まったく分かっていませんでした。
それでも、周囲には「独立したい」と繰り返し話していました。情報が欲しかったのもありますが、自分を奮い立たせるためでもありました。口にした以上、「口だけだったな」と思われたくない。自分で自分にプレッシャーをかけていたのです。
そうしているうちに、ある先輩から話が来ました。
「経営がうまくいかず、売りに出ている整骨院があるけど、見に行ってみるか?」
これが、私の経営者としての第一歩になりました。
「買えば始められる」と思っていた
買い取り金額は約450万円。院長とスタッフ2名が働いていて、すでに通っている患者さんもいる整骨院でした。
現地を見て、「この立地なら成功する」と分析できたわけではありません。正直に言えば、「自分なら、どこでもそれなりにできるんじゃないか」という、怖いもの知らずの気持ちがありました。
貯めていたお金と借り入れで購入に踏み切りましたが、当時の私は、その約450万円で何を引き継ぎ、何が別途必要になるのかを、十分に整理できていませんでした。
振り返ると、最初に立ち止まって確認するべきだったのは、そこでした。
次々と分かった、別に必要なお金
まず、店舗は賃貸物件でした。
整骨院の買い取りとは別に、賃貸契約を結ぶ必要があり、保証金や不動産会社への仲介手数料がかかりました。当然、家賃も発生します。私は、こうした費用を当初の資金計画に入れられていませんでした。
次に、人の問題です。
もともとの院長とスタッフに残ってもらうつもりでしたが、患者さんを増やしていきたい私と、一人ひとりに時間をかけたいという現場との間で、方針がかみ合いませんでした。話し合いの結果、3名とも退職することになりました。
私自身も、事前に働き続ける意思や運営方針を十分にすり合わせられていなかったのだと思います。
そこから改めて求人を出し、面接をすることになりました。求人費用がかかるだけでなく、開業に向けた準備にも時間が必要になったのです。
古くなっていた看板や店舗の印象を変えるため、緑色だった外観を明るいピンク色にするなど、手直しにもお金をかけました。
さらに、院内の電気治療器やウォーターベッドなどには、リース契約の機器があることも、引き継ぎの段階で分かりました。契約を引き継ぐ手続きをし、毎月のリース料も支払うことになりました。
必要な費用と、自分で選んだ改装費。その両方が重なり、想定以上の資金が必要になりました。
「約450万円で買える」と、「約450万円で開業できる」は、まったく違う話だったのです。
施術の経験と、開業の知識は別だった
私は整骨院の現場で働いていたので、施術や患者さんとの会話には経験がありました。
でも、店舗の買い取り、賃貸契約、機器のリース、スタッフの引き継ぎについては、初心者でした。
現場の仕事ができるからといって、開業に必要な準備まで分かっているわけではありません。この違いを、私はお金と時間を使いながら知ることになりました。
経営コンサルとして、開業前に確認したいこと
今なら、購入を決める前に、少なくとも次のことを整理します。
- 買い取り代金に何が含まれ、何が含まれていないのか。
- 店舗を借りるために、別途いくら必要なのか。
- 機器は所有物なのか、毎月の支払いが残るリース品なのか。
- スタッフは残る意思があり、運営方針を共有できているのか。
- 開業準備から営業が軌道に乗るまで、どれだけ資金が必要なのか。
当時、経営コンサルに相談できていたら、一緒に確認してほしかったのは、こうした点です。
あのとき、相談できる相手がいたら
振り返って思うのは、「もっと大勢の人に聞けばよかった」ということではありません。意見が増えるほど、判断に迷うこともあるからです。
欲しかったのは、開業や事業の引き継ぎを経験し、私の状況を一緒に整理してくれる相談相手でした。
「その450万円は、何に対して払うお金ですか?」
「それ以外に必要な資金は、確認できていますか?」
契約する前に、そう問いかけてくれる人がいれば、準備や交渉の仕方は変わっていたと思います。必要な支出をすべてなくせるわけではありません。それでも、知らないまま進めて慌てる場面は減らせたはずです。
独立したいという気持ちを周囲に伝えたことで、私にはチャンスが巡ってきました。その行動自体は、今も大切だったと思っています。
だからこそ、これから独立する方には、行動する勢いと一緒に、判断を支える準備も持ってほしい。
私自身が当時欲しかった相談相手。その経験が、今、経営コンサルの仕事に取り組む原点の一つになっています。
経営コンサルのご相談・開業の参考情報
開業時に必要な資金を整理する参考として、中小機構のJ-Net21に掲載されている開業資金の考え方もご覧いただけます。
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